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岁月不似春风

たしかに母は過去

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たしかに母は過去


古い写真を見せた。
幼児のぼ物業套現くが、若い母に抱かれている。
突如、母は夢から引き戻される。
小さくなったという頭の底にセピア色の記憶が張り付いて残っていたようだ。感激して泣きそうになっている。そのような母の顔を久しぶりにみた。
写真を見つめている間、たしかに母は過去の時間と繋がっていた。あるいは、その時のその過去は、今なのかもしれなかった 。
その写真を手放した瞬間護士に、母の過去はふたたび消えてしまうのだろう。その写真と同じように、その瞬間が、今という静止画の1枚なのだった。


母がいる3階は、L字型に二つの大きな分室になっている。
それぞれに個室が10部屋ずつあり、中央に大きなテーブルが二つ置かれて、そこが食堂になったり談話室になったりしている。
座る席も大体決まっているのか、いつも同じ年寄りが同じ場所に陣取っている。
各人は話をするでもなく、テレビを観るでもなく、ただぼんやり座っている。
母は食事の時以外は、自分の部屋で寝ている。何もしたくないのだという。
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